トヨタの強さの秘密

 読んだ本

購入動機

・特にトヨタが好きとか車に魅力を感じたりといったこともあまりないですが、だからこそ、ここまで世界的に広まっている理由を知りたくなった

日経ビジネスか何かの書評欄で存在を知り、Amazonレビューも良かったのでほしいものリストに入れていたところに、図書館でたまたま借りられたので読んでみた

フセン箇所

・「ビジネスのプロ」に代わって、「製品の社長」を会社の社長に据える会社が増えている。

トヨタの利益の95%以上はTPDのハタラキで生み出されている。実際に消費者が製品として買うか買わないかといったことを決める製品の価値もTPDで企画設計開発されている。トヨタでは売価は変えられないので利益を上げるにはアタマを使って原価を下げるという考え方をする。

トヨタ式の研究はソフトウェア開発の分野ではリーンやアジャイルなどと呼ばれてシリコンバレーで展開されるようになった。アップル社のように設計情報のみ開発し、量産は中国の製造請負に任せているような企業も多い。現在のシリコンバレーの反映のルーツはリーン開発・トヨタ流製品開発TPDを学んだことにある。

・主査は担当する製品に関する全ての事柄に責任を持つ。まず主査は、①市場の情報、顧客・非顧客の情報、強豪の情報②技術の技術の情報③原価の情報などを踏まえてターゲットの市場が求める商品の魅力と性能、価格、重量などを企画し製品の構想を練る。主査の人事等級は部長クラス、主担当員は課長クラス、担当員は課長クラスである。ちなみに主査の上司は技術系の役員などであり、彼らが主査室の室長を兼務している場合がある。トヨタの主査は各部門に、方針・指示を出すことはできるが、各部門の担当者に対しては人事権を一切持っていない。主査の言うことが間違っていると思えば、従わないこともある。

・TPDにおける人間系とは、創造労働をする人間のタレント・マネジメントのことである。①タレント:複数分野の基礎知識と知識獲得能力を持ち、目的的な創造的知識労働をすることで未知の領域を既知の領域に変えられる人②プロフェッショナル:定型的知識労働、すでにわかっていることを間違いなくできる人③スペシャリスト:特定分野の専門家 新しい何かの価値や方法を生み出す場合にはプロフェッショナルやスペシャリストであることを前提として、それ以上の創造的な労働ができる種類のタレントが中心となる。

トヨタでは新入社員の段階から主査の素質のある人材には目星をつけているはずである。地頭がよく、特定分野の専門知識を持ち、社会や経済、技術に精通している人材を技術部門に配属する。その中から、目的志向で知識獲得能力が高く、アナリシス・シンセシス(統合)能力が高いタイプの人材を見出し、適切な経験を積ませることになる。候補者は各専門部門でキャリアを積み、能力や経験が充実してくる頃、主査の部下である主査付になる。その後さらに、製品企画室の経験を積み、実力が認められれば主査に昇格となる。(15〜20年程度)

・主査の要件は「目的的に仕事ができる人材であり、優れた知識獲得能力・地頭力・洞察力を持つ。具体的には、複数分野の専門知識に精通し、目的達成に必要とあなる知の領域を短期間に拡張できる能力を持つと同時に、各分野の専門家集団を動かすための論理的思考能力とコミュニケーション能力を併せ持つ。広くて深い基礎知識と新の基礎の知識を持つ。①主査は、常に広い知識、見識を学べ。②主査は、自分自身の方策を持て。③主査は大きく、かつ良い調査の網を張れ。④主査は、良い結果を得るためには全知全能を傾注せよ⑤主査は、物事を繰り返すことを面倒がってはならぬ。⑥主査は、自分に対して自信(信念)を持つべし。⑦主査は、物事の責任を他人のせいにしてはならぬ⑧主査と主査付きは同一人格であらねばならぬ。⑨主査は、要領よく立ち回ってはならない。⑩主査に必要な資質−知識、技術力、経験、判断力、決断力、度量、感情的でないこと、冷静であること、活力、ねばり、集中力、統率力、表現力、説得力、柔軟性、無欲というよく。要するに総合能力が必要。それは「人格」。

・専門化とは、特定の業務を毎回覚えるのは手間なので特定の人に特定のことだけを繰り返しやらせるということ。専門化はそれ以外の能力が開発できないというデメリットもあるのでトレードオフ。定型業務は派遣労働者に任せ、設計者に創造業務を任せることなども含む。

・主査制度を導入するときに最も障害になるのが組織文化である。組織文化とは「誰が偉いか」ということ。ジョブズにしても大主査にしても少し変わり者が多い。そうした人たちのタレント性を純粋に評価し、尊敬する組織文化を作る、あいつが言っているなら間違いない、という雰囲気を作っていくことができないと成功する製品開発は難しい。優れた製品の社長、主査型の人材を会社の運営の実質的な中心にす言えないとグローバル市場で勝ち続けることは難しくなっている。

・「技術と人材と頭脳が全て」という考え方はトヨタ創業者である佐吉氏以来のもの。研究開発が価値を生むのは世の中で通用する価値を持った商品になった時。例えばNTTは過去15年間で4兆円使っているが、あーケットにはそれに見合う成果は見当たらない。いつまでたっても意味ある財やサービスになっていないから。トヨタではハイブリッドや水素自動車のようなイノベーションが起こせるのはNTTと考え方が正反対だから。最終的に勝ちを生み出す研究開発を主導する能力があるのは主査型の人材。NTTがうまくいかないのは、細かい要素技術中心でボトムアップから研究開発をしているから。組織が細かいサイロのようになってしまって最終的に自分たちの研究成果がどういうサービスに結びつくのかよくわからず金ばかり使っている。

アクションメモ

・仕事でたまたま検討中の、「スペシャリストの処遇、育成、CDP」の整理に活かす。

読書メーター2016

43冊目(9/19読了)