クロネコヤマトの経営学

読書は好きというか趣味というか、常に何かは読んでないと落ち着かないものなので、毎年ある程度目標の数を決めて読んでます。

以前までは年間100冊とか200冊とか多読してましたが、ここ1,2年は50冊に絞って、読んだ本をしっかりと理解&実践するようにやや方針転換しています。

それを機会に、昔買ってから、毎年の本棚整理からずっと逃れてきた思い入れの強い本を中心に読み直すことも最近は増えました。

今回、紹介する本もそんな本の一つです。

小倉昌男 経営学

小倉昌男 経営学

小倉昌男 経営学

 

言わずと知れたヤマト運輸の元会長で、「クロネコヤマトの宅急便」の生みの親、故 小倉昌男氏の名著です。

素晴らしい経営者としての視点、優れたサービスの生み出し方という視点など、様々な視点から学ぶことの多い1冊です。

それぞれの観点から、個人的に刺さった内容を以下に簡単にまとめてみました。

サービス至上主義

・「サービスが先、利益は後」という決断。サービスを向上し、差別化しなければ決して利益は出ない。先に利益を考えるのをやめ、まず良いサービスを提供することに努力すれば、結果として利益は必ずついてくる。どちらを先に考えるかで結果は変わる。ただ、この言葉は課長には言えない。社長だから言える。だからこそ、社長が言わないといけない。

・収支のことは一切言わない。その代わりサービスのことは厳しく追求する。サービスの効果は図るのは難しい一方で、コストは測るのは容易。だが、データを揃える社員の給料と検討する役員の給与を考えると却ってコストが高くつく。

・サービスとコストはトレードオフだが、両方を比較検討して選ぶという問題ではない。どちらを優先するのか「判断」の問題。

”宅急便”の生み出し方

・これまで、運輸業界にマーケティングという考えは無かった。限定された荷主に隷属的な関係性であった。市場で消費者が何を求めているか知るためにマーケティングがあり、営業活動の中核はマーケティングであるべき。運輸業界にその考えが無いのがおかしいと考えた。

・商品コンセプトを検討するにあたって、ネーミングは非常に大事。また、宅急便は一個口にこだわり、運賃を簡単にし、また持ってくる荷造りの方法には決してうるさく言わないようにして、極力身近なものにするように心がけた。

・荷物は当時、平均23キロだったが、10キロ以内とした。これからは女性ドライバーの時代が来ると考え、一人で持ち運べる重量にした(先見性)

・どこでも「翌日配達」とし、それで徹底的に差別化を図った。車体に書いて走り回り、もちろん宣伝のためだったが、真の狙いはヤマトの社員に必ず翌日配達するという決意表明を促すものだった。

経営者の条件

・経営者に必要なのは「論理的思考」と「倫理観」。経営は論理の積み重ねであり、他人の真似でなく自分の頭で考えて、競争相手を攻めていかないといけない。倫理観はトップが自らの態度で示してこそようやく、企業全体の倫理観が高まるものである。

・戦略的思考を持つべし。日々の競争に勝つための方策は「戦術」であり、戦略とは経営目標を実現するための長期的な策略である。何が本当の第一かを判断し、メリハリをつけないといけない。(何でも”第一”が好きな社長は多い。第二がなくて第一ばかりなのは本当の第一が無いということ)

・攻めの姿勢で。攻めとは需要を作り出すということ。常に起業家精神を。

・サラリーマン経営者は自己責任の心が乏しく、付和雷同的で先送り思考。経営幹部たるもの、会社の現状と将来の問題点に対して真剣に考え、危機感を持っていなければならない。

強い組織の作り方

・現場最前線のフォワードであるセールスドライバーのやる気をいかに引き出し、楽しく働いてもらうか。寿司屋の職人のように、彼らがスターであり、女将や経営者は脇役でしかない。それが全員経営の成功の秘訣である。

・日本に能力主義の導入は難しい。社員に辞めてもらうことができないため、米国と同じという訳にはいかない。集団主義は企業への忠誠心が高いというメリットがある。一番の欠陥は年功序列。上級生が裏方に徹することができるような人事処遇制度を工夫して作らないといけない。

成果主義は難しい。人柄の良し悪しを評価の要素に取り入れることが大事。下からの目と横からの目で社員の人柄を評価する。上司の目ほど頼りにならないものはない。誠実であるか、裏表ないか、助け合いや思いやりの精神を持っているか。人柄の良い社員はお客様に喜ばれる良い社員であり、長い目で見て必ずプラスになる。

感想

1回目に読んだのは8年も前の話で、まだ入社して法人営業しか経験が無かった時でした。今となっては、仕事も大きく変わって企画業務や人事/育成という仕事を経験し、立場も変わっていることもあり、どちらかと言うと宅急便が生まれた経緯よりも、小倉氏の持つ確固たる「経営者とはかくあるべし」という部分が非常に突き刺さりました。

リーダーに求められることも本質は同じであり、「何が第一」かを論理的に示し、愚直に行動に移し、メンバーとともに「攻め続ける」ことは常に意識して”実践”していたいと再認識しました。

読書記録

2017年 1月25日読了(今年6冊目)

★★★★★