下剋上

■[通信]通信再編AT&Tのむ

米SBC、AT&T買収160億ドルで合意
米通信2位のSBCコミュニケーションズは31日、同3位で長距離通信最大手のAT&Tを買収することで合意したと発表した。
買収額は160億ドル。両社の2004年売上高の単純合計は713億ドル強と、ベライゾン・コミュニケーションズを抜き米最大、世界ではNTTに次ぐ2位となる。
1984年の分割まで米通信市場を独占していたAT&Tだが、通信自由化と競争激化によって、企業として姿を消すことになる。買収後もSBCのエドワード・ウィテカー会長兼最高経営責任者(CEO)が現職にとどまり、AT&Tのデビッド・ドーマン会長兼CEOは社長に就任する。知名度の高い「AT&T」を社名やサービスのブランド名に残す公算が大きい。

世界の通信企業売上高ランキング(億ドル)

1NTT(日)1056
2SBC+AT&T(米)713
2ベライゾン(米)713
4ドイツテレコム(独)701
5ボーダフォン・グループ(英)617
6フランステレコム(仏)579
7NTTドコモ(日)479

何が起こったか

まさに衝撃。

米通信市場を独占していたAT&Tが本業の固定電話事業の低迷に加え、携帯電話やインターネットという成長市場で力を発揮できずに、分割で誕生した「ベビーベル」に飲み込まれることとなった。

AT&Tは現在では長距離通信事業を軸としていた。それが地域通信、携帯電話を軸としてAT&Tから分割されたSBCに買収するという下克上の裏には何があったのか。

AT&Tは米国の通信を背負ってきた最大手であったが、分割後、長距離通信の穴を埋めるために最大手CATV会社を買収するなどした結果、財務が悪化した。また、FCC(米連邦通信委員会)に翻弄された部分も大きい。通信会社が独占保有する市内回線網を長距離会社に開放するルールを撤回するなど、規制が頻繁に変わる環境にAT&Tは地域通信からの脱退を決断した。そうした判断の結果が、今日の買収につながった。

NTT再々編

AT&Tの身売りは日本の通信会社にとっても人ごとではない。固定電話が激減し、収益悪化する状況はまったく同じだからだ。

84年に分割されたAT&Tと99年に分割されたNTT。いずれも独占解消のため地域通信と長距離通信会社に分けられた。

今回のAT&Tのケースは地域通信が長距離会社を飲み込んだという点ではNTT東西がNTTコミュニケーションズをのみこんだという例えになる。いや、米国の地域通信会社は携帯電話事業をしているという点、米国は7つもの地域会社に分割されているという点でNTT関東(NTT東の中のさらに一部分という意味の例えです)+NTTドコモがコムをのみこんだという表現の方が正しいだろうか。

どちらにしろ、NTTの危機感は高まっている。再統合論がくすぶっており、グループ企業同士の連携を強化する動きが広がっている。

ただ、日経新聞は「日米では相違点が多い」と結んでいる。

AT&Tは分割時に各社の資本関係を完全に断ったのに対し、NTTは持株会社制で傘下にはドコモを抱えるという形をとっている。
AT&Tがかつて分離した地域会社に追いつめられたのとは違い、NTTは同規模の競争相手が存在せず、収益力では今もライバルを圧倒している点が決定的に違うとしている。その上で、日米の通信政策の違いを踏まえた論議が必要だと締めくくっている。

所感。

AT&Tの身売りは10年以上も前からささやかれていたが、とうとう現実となった。

日本でこうしたことが起こるのはまだ先の話であろう。しかし、日本でもソフトバンクをはじめとする独占企業の対抗勢力が着々と力をつけてきている。球団保有までするようになった今、もはや「ソフトバンクなんか・・」という一言では片づけられない脅威となっている

NTTはこうした状況をバックに再び独占体制強化へと進んでいくのは明白である。今発表されている光化計画なども固定電話の次もまた独占したいという意思の象徴でもある。対してソフトバンクもまた、コンテンツという戦略でNTTの牙城を打ち破ろうとやっきになっている。スピードが速い通信業界において、この勝負の結果は5年後には明らかになっているのかもしれない。

NTTという巨象がソフトバンクを踏みつぶしているのかソフトバンクがNTTを超えているのかますますもって目が離せない。

■コメント(復旧)

#.com『d-55のブログによるとAT&Tは未来のNTT?みたくなってるけど、AT&TとNTTの業務はほとんど同じと考えていいんかな。実際現在のNTTは会社別に地域通信と国際通信に分割されてるけど、東西・コムの業務での差異はあまりないと感じられるし東西がソリューションビジネスを代替的に行えばコムの立場は無くなってしまうよな。』

#daichi-55『徳力さんってコンサルタントがこんな意見を書いてた。「現在のAT&Tは長距離電話サービスの提供会社なので、NTTで言うところのNTTコミュニケーションズ。AT&Tを買収するSBCコミュニケーションズが、NTT東日本や西日本のような地域ローカル会社にあたりますから、正確に言うと規制で分割された兄弟会社がまわりまわって元に戻っただけと言うこともできます。一時期は規制で縛られている地域電話会社に比較して、ISP事業などの様々な新事業の可能性がある長距離電話会社に脚光があたっていた時代がありましたが、気がついたら結局インフラを保有している地域会社のほうが足腰が強い、というのが最近通信業界で起こっている出来事のようです。さらに米国の最近の傾向としては、買収を中心とした業界再編によって、結局寡占化が進むのではということも予想されているようですね。そこで個人的に気になるのは日本の今後の展開。最近のIP電話サービスの普及によって、NTTコミュニケーションズの長距離電話サービスの存在意義は明らかに薄れつつあります。」確かにいいポイントを突いてる。コムの長距離電話事業は間違いなく収縮していく。そうなったときにコムは得意のIPサービスとかソリューション事業に力を入れてく。NTT東西ももちろん本質は同じで固定の収縮をそうしたサービスで補っていこうとする。それが結局NTT東西とコムの合併っていう再々編成につながると思うよ。だから解体が米より10年遅かった日本は再々編成するのも10年遅い気がする。』