ネット帝国主義と日本の敗北


最近、たかじんのそこまでいって委員会をはじめ、様々なメディアによく出ている官僚出身の岸博幸氏。さすが官僚出身というだけあって、官僚組織の裏の裏まで知っていて、なおかつ話も明瞭で短くまとまっており非常に説得力があります。

そんな岸博幸氏が本を出版されたということでこれは買うしかないでしょう。


本書のテーマはミクロの観点からインターネットを賞賛するばかりでなく、マクロの観点、国益の観点からインターネットの現状を批判的に考えてみようというもの。岸氏は現在エイベックスの取締役をしているので、コンテンツ産業の保護という観点からも論じています。

これまで、こうしたネットに関する書籍はGoogle賛美や日本のガラパゴス化悲観論ばかりでしたので、新たな視点が非常に面白い。

以下、いつも通り気になった点を以下に羅列します。
[note]■ネットビジネスのレイヤーは3つ。インフラ層 (通信事業者)とプラットフォーム層(検索サービス、SNS、動画サイト)とコンテンツ層(テレビ番組、新聞、音楽)から成り立つ。[/note]
[note]■ もっとも儲かっているのはプラットフォーム層であり、そのほとんどは少数の米国ネット企業。[/note]
[note]■コンテンツは儲からない。ネットの普及により、コンテンツのユーザにとっての価値と社会にとっての価値の間に大きな乖離が発生してしまった。[/note]
[note]■ 従来のマスメディアやコンテンツ産業のような、媒体毎に縦割りで同一企業がコンテンツの制作から流通までを一手に担うという垂直統合モデルは崩れ、横割りのレイヤーの世界が出現した。流通独占が崩れ、ネット上に無料という概念が蔓延した結果、マスメディアやコンテンツ企業の収益は急速に悪化した。[/note]
[note]■新聞社は倒産しても仕方がないが、ジャーナリズムは民主主義と社会の双方に必要であり、誰かが担わないといけない。
ツイッターなどのシチズンジャーナリズムだけでは事実報道はできても隠された真実を明らかにするといったジャーナリズムの機能を果たし得ない。[/note]
[note]■ネット上に国境が存在しないなんて虚構。プラットフォーム層には国境はないが、コンテンツ層は国境だらけ。[/note]
[note]■日本においては、今後最大の成長が期待されている携帯ネットで世界最先端であることに留意すべき。政府は自らで技術開発なんかしようとせずに、民間に投資をするような支援をすべき。[/note]
[note]■ 通信と放送の融合はもう当たり前。今進みつつあるのはキンドルやコンテンツレイヤーの動きのようなネット上のレイヤー間の融合である。[/note]
[note]■ ネットが当たり前になった今の社会で必要なのは、第一にジャーナリズムや文化が維持される体制を確立することと、第二にプラットフォーム層で国産ベンチャーがもっと成功して海外にビジネス展開すること。[/note]