不思議な話

最近は人事の課題レポートや年度末の駆け込み構築、そしていよいよあと一ヶ月に迫った転勤に備えての引き継ぎなどバタバタドタバタしております。

本のペースは少し落ちますが、今回読んだのはこちら。今回は小説です。

となり町戦争 (集英社文庫)

となり町戦争 (集英社文庫)

 

 三崎さんという方は新人なのですが、この方のインタビューを聞いて面白い発想をされるなぁと思って買いました。

この小説の題材もおもしろい。いきなり、となり町との戦争が始まるという話で、主人公がそれにスパイとして狩り出されるという内容。かといって、SFでもなんでもなくて、極めてリアルに、戦争が一つの行政手段として現代にあった形で淡々と行われていく。

著者は妄想で書いていると言っていたが、まさにそんな内容。著者の頭の中に入っていくといった感じです。だからこそ、amazonのレビューにあるとおり、内容がつかみにくい部分がある。

物語とは直接には関係しないのですが、ところどころでおもしろい哲学が表現されています。

例えば、「学生時代と社会人」について。 

「私、こう見えても学生時代には社会問題に意識を持って活動してきました。環境問題について、福祉や教育、国際紛争・・」 

「だけど、そんな風に考えてきたことって実際に会社に入ったらゼロとは言わないけど役に立つ場面ってほとんどないんですよね。今日プレゼンしたまちづくり整備計画策定業務委託だって事業目的はすばらしいけど、自治体側の導入理由は補助金だし、業者選定も内容よりも価格が重視されちゃうじゃないですか。なんだか私が考えてきたことって実際の社会では何の役にも立たないのかなあって無力感を感じます。」

「それはもっと自分の経験を役立てたいということですか?」 

「そうじゃないんです。役に立たないことが嫌なんじゃなくって、最初から『学生時代と社会に出てからは違うんだ』って切り離して考えていることに憤りを感じているんです。なんだか自分があまりにも簡単に、この社会の矛盾や理不尽を受け入れてしまうことに戸惑っているんです。」

この部分はなかなかガツンときました。私自身も地域活性化をテーマに大学でいろいろと取り組んできて、その延長もあり、今の会社を選んだ部分もあった。

でもやっぱり、会社に入ったら企業の一員となるわけで、企業が利潤を追求する組織である以上、組織が目指すところは当然ちがうわけです。地域への貢献も企業が利潤を追求するための手段であって目的ではない。 

この主人公のように、無力感や憤り、戸惑いを感じる以前に私の場合は無意識にその矛盾や理不尽といったものを受け入れてしまってました。もちろん第1は利潤という成果を出すことではあるけれど、仕事=自分の人生そのものと考えたとき、やはりそれだけではもったいない。意志を持っていたい。

そんな基本的なことを、組織にどっぷり2年間忙殺された後でちょっくら考えさせられた。

そんな出勤前の朝でした。